西洋文化を理解する

演奏=作曲家の通訳

ショパンコンクールで2位を獲得されたピアニストの反田恭平さんが先日、テレビ番組で「ショパンコンクールではショパンの通訳者が評価される」とおっしゃっていました。それで思い出したことがあります。

初級フランス語で「ギターを弾く」は jouer de la guitare (=play the guitar)だと教わるのですが、いざ現地フランスに 行ってみると、よく耳にしたのは jouer(=play)ではなくて、interprèterという動詞 でした。英語でいうところの interpret(通訳する)です。

「曲を演奏する」というときに使う動詞は jouer(=play)ではなく interprèter (=interpret)…この言葉の中に、作曲家の意図を通訳するという意味も含まれているんだと思い、目からうろこが落ちました。

下降の半音階は<死>を意味する

作曲家の意図を通訳するって簡単なことではありません。特に日本人が西洋のクラシック音楽を演奏する場合はとても難しいです。

フランス人の先生からヴィラロボスの<プレリュードNo.3(副題:バッハへのオマージュ)>のレッスンを受けた時のことです。下降の半音階が続くのですが、その時に言われたこと。

「下降の半音階は<死>を意味する。イエスが十字架にはりつけられているところを聖母マリアが見ているイメージだ。」

母親が自分の息子の磔刑を見ている…胸が張り裂けるような痛々しい場面です。楽譜をしっかり読んでいるつもりでも、日本人の自分にとってはたどり着けない発想でした。文化的な背景がちがうと演奏にもかなりの影響があるのではないでしょうか。

動画はジュリアンブリームの演奏で、ヴィラロボス<プレリュードNo.3>の上述の部分です。

逆に、西洋人が日本の有名な曲を演奏するとき、私はどことなく違和感を感じます。同じように美しいのだけど、日本人が絶対にしないような抑揚があったり、大仰すぎたり。それが面白いときもあるのですが。

いろんな文化に触れよう!

西洋では日常的に目にする「キリストの磔刑図」。日本では身近にあるものではありません。

美術館画像
グリューネヴァルト <イーゼンハイムの祭壇画> 

フランスのアルザス地方には有名な「キリストの磔刑図」があります。コルマールのウンターリンデン美術館にある「イーゼンハイムの祭壇画」です。世界中からこれを見るためにたくさんの旅行客がやってきます。

十字架のイエスは衰弱して傷だらけで、見ているだけで痛くてつらくなります。左の白い衣服の女性が聖母マリア。倒れそうなところを支えられています。イエスの足元の女性はマグダラのマリアです。

この絵の下には<ピエタ>のモチーフ。ピエタとは、十字架から降ろされたイエスを聖母マリアが抱きかかえている絵や彫刻のこと。ローマのサンピエトロ寺院にあるミケランジェロのピエタが有名です。

西洋人が普通に知っていること。日本人は意識して勉強しない限りは知らないままです。なので、時には美術館などで異文化を体験したいものです。